大網病院の会計処理誤りについて

 

 令和6年度大網白里市病院事業会計決算については、令和7年大網白里市議会第3回定例会において、不認定となりました。

 

不認定となった日

 令和7年9月25日

 

不認定となった経緯

 令和7年大網白里市議会第3回定例会に「認定第1号 令和6年度大網白里市各会計歳入歳出決算について」を監査委員の意見を付して提出したところ、病院事業会計以外はおおむね適正であると認められるが、病院事業会計については適正と認められないとして不認定と決定されました。

 不認定と決定された理由は、監査委員による「大網白里市公営企業会計決算審査意見書」において、病院事業会計については適正ではないとの指摘があったことによるものです。監査委員の指摘事項は、「【1】資本的収支の不足に対する補てんについて(損益勘定留保資金(注1)の赤字)」と「【2】出資金の取り扱いについて」の2点となっています。

 

監査委員からの指摘事項の内容

1】資本的収支の不足に対する補てんについて(損益勘定留保資金の赤字)

『病院事業会計では、補てん財源の名称と金額の記載内容が、決算書上の不足額と一致しておらず、損益勘定留保資金が不足している状況であり、資本的収支の不足額の補てんができないことによる資本的収支の赤字は、公営企業会計の制度上、想定されていないものである。原因究明を行うとともに、損益勘定留保資金の不足額の算定に努め、早急に資本的収支の赤字への対処を図られたい。』

2】出資金の取り扱いについて

 『病院事業会計では、長期前受金(注2制度が導入された平成26年度以降、出資金の取り扱いを誤り、出資金の一部のみを資本金に繰り入れたほか、当該出資金を地方公営企業法施行規則第21条第3項の規定により補助金の例による整理の対象としていた。これにより、関係する財務諸表が正しく表示されていなかったことから、原因を究明するとともに早急に過去からの誤りを是正されたい。』

 

決算不認定後に講じた措置の内容

 指摘された内容について、それぞれ過去に遡って精査を行い、会計処理の修正方法については、公営企業会計に精通した公認会計士に支援を依頼し、修正を行いました。

 具体的な修正内容は、次のとおりです。

1】資本的収支の不足に対する補てんについては、大網病院が組合立病院から町立病院へ移行した昭和60年度に遡って、決算状況の洗出しを行った結果、5千万円を超える損益勘定留保資金の不足(赤字)があることを確認しました。

 損益勘定留保資金の不足(赤字)は本来あってはならないことで、早期に改善する必要があり、その方法は、未処理欠損金(注3)(累積赤字)約20億3千万円を解消することです。

未処理欠損金の解消には、毎年度、利益を計上し欠損金を補てんしていく方法と、資本金の額を減少(減資 注4)し、未処理欠損金に振り替える方法があります。

 今回、早期に解消するには現金収支を伴わない減資の実施が適切と考え、資本金の額を減少し、未処理欠損金と相殺するための議案を令和8年大網白里市議会第1回定例会に提出し可決されました。

 これにより、指摘された損益勘定留保資金の不足(赤字)は解消され、今後の大網病院会計予算・決算の調製に支障がなくなるとともに、大網病院の経営状況をわかりやすく示すことができるようになりました。

減資イメージ図

 

2】出資金の取り扱いについては、市から出資金の名目で受け入れた場合、資本金に計上すべきところ、解釈を誤って長期前受金に計上していたことから、新会計基準への移行が実施された平成26年度まで遡り、長期前受金から資本金への振替について再確認したうえで、会計処理の修正を行いました。

 なお、平成26年度以前にも、一部の補助金の取り扱いについて、誤って資本金として計上した事例がありましたので、併せて修正を実施しました。

 

今後の対応について

 今回の会計処理の誤りについては、暦年の損益勘定留保資金を把握していなかったことと、地方公営企業法の解釈を誤り、一般会計(市)からの出資金について一部を資本金ではなく長期前受金として取り扱うなど、職員の公営企業会計についての知識不足や、病院内部の管理・チェック体制不備が要因であったと考えています。

 今後の対応策として、会計処理における主担当者のほかに副担当者を配置したうえで、定期的な人事異動による遺漏のない体制とします。

 また、会計担当職員を公営企業会計に係る研修に積極的に参加させるなど適切かつ持続的な人材育成に努めます。

 

注1 損益勘定留保資金とは

 損益勘定留保資金とは、病院建物や医療器械にかかる減価償却費など、収益的収支における現金支出を必要としないものを費用に計上することによって留保される資金のことです。損益勘定留保資金には、過年度分損益勘定留保資金と、当年度分損益勘定留保資金とがあります。

 資本的収支の不足に対する補てん財源として使用できる額は、長期前受金戻入相当額や、欠損金が見込まれるときはその額を控除した範囲内の額とされています。

注2 長期前受金とは

 長期前受金とは、将来の収益として認識されるべき金額を一時的に負債として計上するものです。公営企業会計では、補助金等で取得した固定資産の減価償却費を計上する際に、その財源となった補助金等を長期前受金として負債に計上し、減価償却費の進行に合わせて長期前受金戻入として収益として振り替えることとされています。

長期前受金イメージ図

 

注3 未処理欠損金とは

 未処理欠損金とは、過去の事業活動によって生じた各事業年度の欠損(赤字)を積み上げたもので、返済義務のある借入金(負債)とは異なります。大網病院事業会計決算では、平成8年度以降赤字の年度が23回あり、平成18年度には2億8千万を超える赤字額を計上するなど、未処理欠損金が多額になっており、今回の見直しを反映させた結果、未処理欠損金の累計額が約20億3千万円となっていました。

 なお、大網病院では、赤字の年度であっても、一般会計(市)からの繰入れ(補填)により、現金が不足する状況は発生しておりません。

 

注4 減資(地方公営企業における減資)とは

 平成24年度の地方公営企業法の改正により、地方公営企業は、議会の議決を得ることで資本金を減少(減資)することができるようになりました。大網病院事業会計の決算では、年々、資本金と未処理欠損金が大きな金額となってきていますが、資本金が未処理欠損金を大きく上回っている状況で、減資により、資本金と未処理欠損金を相殺することで損益勘定留保資金の不足を解消することができます。

 この減資は、あくまでも会計上の処理であり、大網病院が保有する現金や固定資産等、事業継続に必要な財産は引き続き保有できることから、大網病院の経営に影響を与えるものではありません。

 資本金は、財産的な価値をもつ資産(現金等)ではなく、一般会計からの繰入金の金額を積み上げた会計上の数値です。

 また、民間企業における資本金の減少とは異なり、信用力に影響はなく、資金調達としての企業債の借入れなど公立病院としての事業運営に支障は生じないものです。ただし、デメリットとしては、減資を行うことにより、これまでの一般会計から出資金として受け入れた累計総額が分かりづらくなってしまうことが考えられます。