地域医療サービスの向上と健康維持をめざして~総合診療 座談会~
大網病院にて10月末に開設した「総合診療科」の役割や地域医療への展望について、総合診療科外来を担当する岡田唯男医師(亀田ファミリークリニック館山院長)と金坂昌典大網白里市長、安蒜聡大網病院長が座談会を行いました。
▲岡田医師(左)、金坂市長(右後)、安蒜院長(右前)
本日はよろしくお願いします(三人)
(総合診療科とは)
金坂市長:「総合診療って何?」と思う方が多いのではないでしょうか。自分の体の症状をどこへ相談したらいいのかわからない方も多くいらっしゃると思います。
岡田医師:はい。総合診療への需要は昔からあります。
金坂市長:市役所にも総合案内があるように、1か所で事が済むといった感じでしょうか。
岡田医師:そもそも昔は、お医者さんって、お医者さんしかいませんでした。「〇〇科、△△科」というように専門が分かれておらず、一人の医師が全部診ていました。最も古い専門家として。なぜなくなってしまったのか・・・。今では絶滅危惧種とでもいいましょうか。(笑)
金坂市長:なるほど。亀田ファミリークリニック館山には、総合診療研修のため多くの医師が来ると伺いました。
岡田医師:そうですね。研修希望の医師が全国から来ています。
金坂市長:すべてを診るという事ですが、そもそも医師になる時に研修を受けるんですか。
岡田医師:最小限ですが一通り研修はします。総合診療医、プライマリケア医はさらにその一通りの診療の質を高めています。
金坂市長:そういったことが今、あらためて求められていると。昔に戻ったということなのかもしれませんね。
岡田医師:はい。
金坂市長:これから大網病院で総合診療を実施していただくわけですが、地域住民にはどう影響していくでしょうか。
安蒜院長:未開拓な領域なので、まさにこれからという印象ですが、時代のニーズとして、総合診療医、家庭医療、プライマリ・ケアという形で担っていただける医師が地域に増えれば、住民の健康度も上がっていきます。「外科が専門」「循環器が専門」という医師ももちろん必要ですが、すべてを診るオールマイティな医師がいると地域住民からも喜ばれると思います。
岡田医師:生活する中でコンビニが無いと困りませんか。何らかの品物を買うのに、わざわざ専門店を選ぶかというと、そうでもないはずです。有事の際、例えばがんや心筋梗塞は大病院の専門ですが、日常の診療まで担うと、医療がおかしなことになってしまいます。
金坂市長:地域の開業医との連携や患者の紹介はどうですか。
岡田医師:時には手に負えない患者を他の診療科医師に紹介することもありますが、一日に一人いるかどうか。自分たちで95%以上は完結させています。「振分けの専門家」ではなく「完結の専門家」として。
▲「総合診療医は完結の専門家」と語る岡田医師
(大網病院の役割や展望)
安蒜院長:大網病院は現在も健診業務に力を入れていますが、これからは、今まで実施していなかった、例えば「子宮頸がん検診」や「小児のワクチン接種」も可能になります。特に、婦人科関係については、大網白里市内にはクリニックがなく、千葉・茂原・東金などの近隣市へお願いしていましたが、大網病院で受診できるようになります。
金坂市長:大変、大きなことですね。
岡田医師:「自治体内完結率」という言葉があるように、市民が、住んでいる自治体の中で公立の医療機関を受診するというのは、財政面からみても大変重要だと思います。住民の方が、市外の医療機関や開業医へかかれば保険の支払いは当然、そちらへ出ていきますが、大網病院で受診できるようなれば、支払った分が市へ戻ってくるわけで経営効率は良くなります。
安蒜院長:その体制づくりは大網病院としても同感であり、岡田先生にお力添えいただきたいと思います。なお、来年の1月からは、専攻医の医師も常勤として来ていただけますので、一緒に取組んでいきたいと思います。
金坂市長:大変心強いお話です。ありがとうございます。
安蒜院長:総合診療科開設は大網白里市広報紙や病院ホームページへの掲載のみならず、「地域医療連携の会」を通じ、地域の開業医にもPRさせていただきました。
岡田医師:PRの成果はどうですか。
安蒜院長:良好です。ある開業医からは、「候補の患者もいるのでぜひお願いしたい」と積極的な声も聞かれました。
岡田医師:これから総合診療科を継続していくためには自治体行政の理解と協力も不可欠です。
金坂市長:市として、住民の健康維持のため、しっかりとサポートしていきます。